令和3年(2021年)にあった相続制度の改正について

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令和3年(2021年)にあった相続制度の改正について

平素よりお世話になっております。

岡野法律事務所弁護士の山口祐樹と申します。

今回は、主に令和3年(2021年)にあった相続制度の改正についてご紹介したいと思います。

相続法の改正といえば、平成30年(2018年)にも行われ、その際の主な改正点は、配偶者の居住の権利を保護するための方策、自筆証書遺言の方式の緩和などでした。

今回の改正は、相続登記の申請義務化、所有者不明・管理不全の土地・建物管理制度等の創設、共有制度の見直し、相隣関係規程の見直しや相続土地国庫帰属制度の創設などと関連しながら行われるものです。

改正理由は、所有者不明土地の増加が社会的に問題となっている点にあります。

国は、この問題に対して、発生予防と利用の円滑化の両面からこの問題を解消していこうと考えており、その方策が先程述べた様々な改正ということになります。

前置きが長くなってしまいましたが、ここからは、相続制度についてフォーカスしてご説明します。

そもそも相続登記が適切になされていれば、所有者が不明であるという事態はおきません。

そして、相続登記の実質的な前提でもある遺産分割についても、相続開始時から10年以内に遺産分割しないと具体的相続分(特別受益や寄与分が考慮された相続分)による遺産分割を求める利益を失わせることにより、早期に遺産分割をなされるよう促すものが今回の改正です。

要するに、早く遺産分割しないと特別受益や寄与分を主張できることもできなくなるということです。

なお、法務省の資料によると、長期間放置された後の遺産分割では具体的相続分に関する証拠等が散逸し、共有状態の解消が困難であるところ、個別案件ごとに異なる具体的相続分による分割の利益を消滅させ、画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行う仕組みを創設することにより、遺産分割長期未了状態の解消を促進するものと紹介されています。

ここで、特別受益と寄与分という言葉がでてきました。

例えば、母は先に亡くなり、自分には、父と兄がいて、この度、父が亡くなったとしましょう。

特別受益とは、例えば、自分の兄は、父が亡くなる前に1000万円の贈与を受けていたなどの事情があった場合に問題になります。

このとき、兄は、遺産分割に先んじて、生前にその一部を受け取っていたともいえるわけですから、遺産分割協議の際は、これも考慮してもらわないと自分としては納得がいかないということになるでしょう。

また、自分は、父の病院代を(父ではなく)自分の財布から出していたなどの事情があれば、父が亡くなった時に遺していた財産は、自分が病院代を支払っていなければもっと少なかった、自分は被相続人(父)の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたといえそうです。

これが寄与分です。

自分としては、これも、遺産分割協議において、考慮してもらいたいと思うはずです。

しかしながら、亡くなった後、通夜、葬儀、役所での手続のあれこれ、初七日などの忌日法要、年忌法要……と慌ただしく過ぎていき、そのうち親戚とも疎遠になり、気付いてみれば数年が経過してしまった。

その後、手紙でやりとりをするものの、相手の反応は悪く、そこでもずるずると時間が経過していく。

となっていけば、最終的には、上記の特別受益や寄与分を主張できなくなってしまうというのです。

10年もあればさすがにそれまでに解決するだろうと思うかもしれませんが、最近でも、10年以上前の相続案件を取り扱うことはあります。

それに、時間が経過することによって、兄がなくなり、その子ら(例えば、息子2名)が遺産分割協議の当事者になってしまうと、その人達は、こちらの献身やその親(自分の兄)の事情は知らないかもしれませんし、知っていても知らないふりをするかもしれません。

そうすると10年経たないまでにも、主張したかったことが認められにくくなってしまいます。

また、遺産分割をしないままに、関係者が増えてしまったときのことを想像してみると、上記の例のように、相続人が2名から3名になる程度であれば問題はなさそうですが、放っておくと相続人が10人以上になってもおかしくありません。

弁護士からすると、相続人が10人以上、20人以上いるというのはそんなに特別で珍しいことでもないように思います。

こうなると相続人関係図を作るまでも一苦労ですし、調べるまで名前も知らなかった人に、事情を説明するにも骨が折れます。

いずれにせよ、相続生じれば(すなわち、人が亡くなれば)、早めに遺産分割も済ませておいたほうがよいといえます。

なお、特別受益や寄与分が主張できなくなるという法律は、施行日(令和5年4月1日)よりも前に亡くなった方の相続についても適用されます。

これについては、経過措置も定められていますので、ご自身の場合にどうなるかは、弁護士にご相談くださればと思います。

また、相続はこれからだが不安がある、自分自身が亡くなった時についても気になるということであれば、遺言を遺しておくことが、今後の紛争予防のために、非常に有効な手段だと考えます。

ちなみに、私の伯父は、50代の時に遺言を作成しています。

弊所でも、遺産分割協議や調停だけでなく、自筆証書遺言や公正証書遺言の作成のお手伝いも数多くしておりますから、きっと皆様のお力になれるはずです。

まずは、気になることのご相談からでもお勧めいたします。

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